【話題】Getty Imagesが発表した2018年のヴィジュアルトレンドは『ステレオタイプからの脱却』
Getty Imagesによるヴィジュアルトレンドレポートが公開されています。今年のキーワードは『(人に対する)ステレオタイプから脱しよう』ということと、『概念的実在』の大きく2点のようです。
(誤訳などありましたら教えてくだださい。)
全体を通して~ステレオタイプからの脱却~
読んでいると「liberate stereotype (ステレオタイプからの開放)」という言葉が何度も出てくることに気づきます。Gettyのヴィジュアルトレンド2018のこの1ページだけで13回も登場。ということは間違いなく今年最も重要なキーワードということになりそうです。
何に対するステレオタイプなのかと言えば、人種、性別のことを指しています。
Myles Loftin氏の例
Gettyは写真家Myles Loftin氏が2017年に発表したプロジェクト『HOODED』を例に挙げています。カラフルな背景とパーカを身にまとって自由奔放に楽しんでいる姿が収められています。
Loftin氏を評価する記事をいくつか読むと「19歳少年の人種差別への大きな挑戦」なんてすごい大げさに書いているなと思うところがあるのですが、世界的にはまだまだ人種差別が根強いようで彼のように大胆な活動はフォローしたいのでしょう。
See How This 19-Year-Old’s Photography Project Is Challenging Racial Injustices – BET
といろいろ話してみましたが、日本人にはこんな話題でなぜ騒ぐのかよくわかっていない人が多いのかも? 私もそのひとりです。おそらくLoftin氏がこんな派手な格好をしてチャーミングなポーズの写真を見ても「わぁクリエイティブ」とか「色使いがいいね」とか、そのくらいにしか思わない人が大半だと思うのですがいかがでしょうか? 要はそれで良いってことみたいです。
既にイギリスではステレオタイプを喚起する広告は禁止
あとイギリスではステレオタイプを喚起するような広告は禁止されているそうです。近年は日本でも新作のCMが流れる度にあーだこーだ言われては中止に追い込まれているのが多発していますから実質的に日本でも放送できない流れになっていますね。
例えば「お父さんはビシッとスーツを決めて出勤し、お母さんは家事に励む。男の子はアクションヒーローのものまねをして屋外で遊び、女の子はお人形さんと屋内で大人しく遊ぶ。」みたいな描写を使っての宣伝は一部の国で放送できないとかっていう話は聞いたことがありましたが、イギリスだったんですね。
Myles Loftin氏に感心がある方はInstagram(インスタ)で #blackboyjoy で検索してみてください。Loftin氏の活動に賛同するいろんな方の写真が見れるそうです。
Hooded – Myles Loftin Photography
2.Conceptual Realism~概念的実在~
2番目に書かれていることです。直訳すると『概念的実在』ということになりますが、すみません勉強不足のため分かりません。
たぶんですが、「人間は目的のために実在する道具などを生み出す。つまり目的がないものは存在する必要はないはずだ。」という考えをしてしまいがちだが、これは人間には当てはまらなくて、「人間は実在が先にあって、生きる目的があるかないかは問われるべきではない。」ってことではないかと思います。
つまり、今回の大枠である「ステレオタイプとかに影響を受けた状態ではなくて、その人物の生い立ちや見てくれがどうであれ素直に受け入れましょうよ。(写真に収めましょうよ。)」とGettyは言いたいのではないかと思います。
さて、今回のトレンドの中ではクリエイティブな要素を試される項目のようですが、画像だけ見ていると去年書かれていた『遠近法など、見る角度を上手く利用したトリック写真』の延長線みたいなことを言っているように聞こえます。
SCA Bodyform/Libresse “Blood” – CLIO AWARDS
ターゲスシュピーゲル紙の例
例えば、去年最も話題になったのはターゲスシュピーゲル紙(Der Tagesspiegel)によるドナルド・トランプ大統領が一面を飾った新聞。口がめっちゃ長く見えるように積み重なって置かれていたやつです。
Photo from Trump’s a scream in this stack of newspapers – boingboing
3.Masculinity Undone~男/女らしくなくっても良いじゃない~
多様な在り方を認める写真については3番でも述べています。日本だと「女性はギャップのある男性に弱い」みたいな言葉がありますが、これに近い印象でしょうか。この表の姿とは異なる部分を素直に表現したっていいじゃないの―ということだと思います。
Jay-Zの歌詞の例
Jay Zはアルバム「4:44」で自分の弱い面を全開にさらけ出しています。和訳はここのサイト1>にあったので参考に。私は彼の音楽を20年前から聴いていますがこんな一面があるとは。
Jay-Z 4:44 和訳 – いーネ!洋楽
Image from ジェイ・Zが新作『4:44』を配信リリース 自身の不貞をビヨンセに謝罪か – BMR
The Blazeの映像作品の例
The Blazeの「Territory」という作品も例に挙げられています。こちらは2017年カンヌライオンズのグランプリがミュージックビデオだったという、しかも審査員満場一致で選ばれたという珍しい事件(?)だそうですが、それほどに心をもっていかれる作品です。この作品でも無邪気でありつつも脆くもある男性像が描かれています。
異例の審査員全会一致でカンヌライオンズのグランプリに輝いたThe BlazeのMV「Territory」 – NEWREEL
1.Second Renaissance~少数民族や文化へのステレオタイプを取り除く~
順序がかわっちゃいましたが、これがレポート1番目の「Second Renaissance」です。BAME(Black, Asian, and Minority Ethnic)に対する文化的な豊かさを伝えるような写真が注目だと言っています。
個人的な記憶ですが、こういった写真は意識はしていませんがなんとなく増えている気がしなくもないですね。なんとなく私が子供の頃のBAMEが被写体の写真っていうと、すごく悲しそうな眼でこちら見つめているようなものがすごく多かった感じがします。
大人になったくらいから(2010年以後)、笑顔全開の顔のアップとか、工芸品の制作に勤しむ労働者とか、フォトグラファーは彼らの文化に対していい意味で興味をもっていると伺えるような作品を見かけるようになったと思います。なんかそんな感じがしませんか。
我々の地元文化にも当てはまるかも
フォーカスを我々日本人に当ててみましょう。世界的に見ればアジア人だって白人から差別されることはあるという話しはまだ聞きます。ということは我々の郷土文化なんかはこの話題にマッチしているかもしれません。地元に帰った際にはその地域に縁のある衣装をまとって思いっきり楽しんでいる、祭りなどの写真を世界は求めているかもしれません。
おわりに
「撮影って上手い下手は機材は関係ない。ストーリー性や何だーかんだー、だ!」と思いつつも、機材に頼り、写真教室ではテクニックばかり習ってしまう。傍から見ていると結構矛盾している行動に思います。心の何処かで上記のように思っているのであれば、もしかしたら本来は被写体に対する思いとか、それに向き合うための情熱とかが必要になるのかなと思います。
そのためには、被写体の文化的側面とか社会との関係性とかそういうのをもっと心に詰め込んでから、撮影に臨むみたいなことが大切かもしれません。
撮影とは、記録するための作業ではなく、もっと尊いものに昇華するいい機会かもしれません。チャレンジしよう。